松はみな支垂れて南無観世音

 

  分け入つても分け入つても青い山

 

  山へ空へ摩訶般若波羅密多心経

 

  うしろすがたのしぐれてゆくか

 

  鉄鉢の中へも霰

 

  うまれた家はあとかたもないほうたる

 

  雨ふるさとははだしであるく

 

  春風の鉢の子一つ

 

   うどん供へて 母よ わたくしもいただきまする

 

  ふるさとの土の底から鉦たたき

 

  鴉とんでゆく水をわたろう

 

山頭火 ーー句と版画

蛍の母

小崎 侃画  村上 護編  グラフィック社